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出向手当の金額とは?相場と決定要因・人事担当者が知るべきこと

出向手当、それは企業の人事担当者にとって、頭を悩ませるテーマの一つではないでしょうか。
従業員のキャリア形成や企業の戦略において重要な役割を果たす出向ですが、その手当の金額設定は、企業の負担、従業員のモチベーション、そして法的な側面を考慮する必要があるため、非常にデリケートな問題です。
本記事では、出向手当の最適な金額を決定するために、その定義、相場、そして考慮すべき要因を具体的にご紹介します。

出向手当とは何か?目的と種類

出向手当の定義と目的

出向手当とは、従業員が出向する際に、基本給とは別に支給される手当のことです。
その主な目的は、出向に伴う従業員の経済的、精神的な負担を軽減することにあります。

異業種への出向など、環境の変化は従業員にとって大きなストレスとなり得ます。
引越しが必要になる場合や、労働条件の変化による新たな知識の習得、人間関係の構築など、負担は多岐にわたります。
出向手当は、このような負担を軽減し、従業員が安心して出向に臨めるようにするための、企業からのサポートと言えるでしょう。

在籍出向と転籍出向の違い

出向には、大きく分けて「在籍出向」と「転籍出向」の2種類があります。

・在籍出向:出向元企業との雇用契約を維持したまま、出向先企業でも雇用契約を結び、一定期間勤務する形態です。
期間満了後には、原則として出向元企業に戻ります。

・転籍出向:出向元企業との雇用契約を解消し、出向先企業と新たに雇用契約を結ぶ形態です。出向元企業に戻ることはありません。

この違いは、出向手当の考え方にも影響を与えます。
在籍出向の場合、出向元の給与水準を維持するために出向手当が支給されるケースがあります。

一方、転籍出向の場合は、出向先の給与水準に合わせて給与が決定されるため、出向手当が支給されることは少ない傾向にあります。

出向が企業にもたらすメリット

企業側のメリットとは

企業にとって、出向は単なる人材の異動以上の意味を持ちます。

1: 雇用の維持と労務費の抑制:事業縮小などで人員が過剰になった場合でも、解雇せずに雇用を維持できます。

2: 企業力の強化:企業間の連携や人材交流を通じて、新たな知識や技術を習得し、企業全体の競争力を高めることができます。

3: 管理者育成:幹部候補を出向させることで、多様な経験を積ませ、管理能力を向上させることができます。

出向者側のメリットとは

出向は、出向者にとっても成長の機会となります。

1: スキルアップ:出向先で新しい技術や企業文化を吸収し、自身のスキルアップにつなげることができます。

2: キャリアの幅を広げる:異なる環境で働くことで、視野が広がり、将来のキャリアプランを考える上で貴重な経験となります。

3: 自己成長:新しい環境への適応や、異なる価値観を持つ人々との交流を通じて、人間的な成長を促すことができます。

出向手当の相場と決定要因

出向手当の金額相場を知る

出向手当の相場は、企業の規模や業種、出向期間、出向先の状況などによって大きく異なります。
厚生労働省の調査によると、出向手当制度を導入している企業のうち、定額支給している企業の平均支給額は約12,600円でした。
ただし、支給額に幅を持たせている企業も多く、最高額は44,600円、最低額は7,500円という結果も出ています。

このデータからもわかるように、出向手当の金額は一概には言えません。

金額を左右する決定要因

出向手当の金額を決定する際には、以下の要因を考慮する必要があります。

1: 出向期間:出向期間が長ければ長いほど、従業員の負担は大きくなるため、手当の金額も増額する傾向があります。

2: 出向先の環境:出向先の労働環境や生活環境が、出向元と大きく異なる場合、手当の金額を増額する必要があるかもしれません。

3: 出向者の役割:出向先での役割や責任が重い場合、手当の金額を増額することで、従業員のモチベーションを維持することができます。

4: 企業の財務状況:出向手当は、企業の負担となるため、企業の財務状況を考慮して、無理のない範囲で金額を決定する必要があります。

出向手当の負担者と会計処理

手当は誰が負担するのか

出向手当の負担者は、出向元企業、出向先企業、または両者の間で分担する場合があります。

1: 出向元企業が負担:出向元企業が、出向者の給与や手当を全額負担するケースです。

2: 出向先企業が負担:出向先企業が、出向者の給与や手当を全額負担するケースです。

3: 両者で分担:出向元企業と出向先企業が、出向者の給与や手当を分担するケースです。

どの企業が負担するかは、出向契約の内容によって異なります。
一般的には、出向によって利益を得る企業が、より多くの負担をする傾向があります。

会計処理のポイント

出向手当の会計処理は、勘定科目に明確な決まりはありません。
出向先企業から出向元企業に支払われる給与負担金は、「給与」や「支払手数料」などの勘定科目で処理できます。
ただし、給与負担金を「給与」として処理すると、分かりにくくなる可能性があるため、「受取手数料」や「雑収入」などの勘定科目で計上する方が良いかもしれません。

出向手当の給与と税務の注意点

給与決定方法の注意点

在籍出向の場合、出向元と出向先で給与水準が異なることがあります。
この場合、出向者の給与が減額されないように、出向手当で差額を補填する必要があります。
ただし、出向手当の金額が過剰な場合、税務上の問題が発生する可能性があるため注意が必要です。

税務上の留意点

出向手当は、所得税の課税対象となります。
また、出向元企業が、出向先企業から受け取る給与負担金は、法人税の課税対象となります。
ただし、給与負担金の金額が、出向者の給与相当額を超えない範囲であれば、課税対象とならない場合があります。

出向手当に関する税務上の取り扱いは、複雑なため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

出向手当は、出向する従業員の経済的、精神的な負担を軽減するための重要な制度です。
金額の設定には、出向期間、出向先の環境、出向者の役割、企業の財務状況など、様々な要因を考慮する必要があります。
また、税務上の注意点も存在するため、専門家への相談も検討しましょう。
適切な出向手当の支給は、従業員のモチベーション向上、ひいては企業の成長にも繋がるはずです。