コラム
労災事故で障害を負ってしまった場合、生活への不安は尽きないものです。
労災保険からは障害補償年金が支給されますが、十分な金額なのか、他に受けられる給付はないのか、疑問に思う方もいるでしょう。
そこで今回は、労災による障害に対する補償、障害補償年金の受給額を最大化する方法について解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、安心できる生活設計にお役立てください。
労災保険における障害とは、業務上または通勤による負傷や疾病が治癒後、身体に残った機能障害のことを指します。
症状固定の状態であり、医学的に見てこれ以上の改善が見込めないと判断された場合に、障害として認定されます。
労災保険では、障害の程度に応じて様々な種類の補償が用意されています。
・ 障害補償年金: 障害等級1級から7級に該当する場合に支給される年金です。
・ 障害補償一時金: 障害等級8級から14級に該当する場合に支給される一時金です。
・ 障害特別支給金: 障害等級に応じて支給される一時金です。
・ 障害特別年金: 障害等級に応じて支給される年金で、算定基礎日額に基づいて計算されます。
障害補償年金とは、労災によって後遺障害が残った場合に、その障害の程度に応じて支給される年金です。
障害等級1級から7級に該当する場合に支給され、年金額は給付基礎日額(原則として事故発生日の直前3ヶ月間の平均賃金)に、障害等級に応じた給付日数を乗じて計算されます。
障害補償年金は、長期にわたる生活を支える重要な給付となります。

障害補償年金を受給するためには、まず労災による負傷や疾病が原因で障害が残ったことが認定される必要があります。
その上で、障害の程度に応じて1級から7級までの障害等級が決定され、その等級に応じて受給の可否や年金額が決まります。
等級が高くなるほど、障害の程度が重く、受給できる年金額も高くなります。
障害認定の基準は、厚生労働省が定める「労働者災害補償保険障害等級認定必携」に基づいて判断されます。
視力障害、聴力障害、肢体障害、精神障害など、障害の種類ごとに詳細な認定基準が設けられており、医師の診断書や検査結果などを基に、労働基準監督署が総合的に判断します。
認定に不服がある場合は、審査請求や再審査請求を行うことも可能です。
障害補償年金の申請には、以下の書類が必要となります。
・ 障害補償給付支給請求書(様式第10号)
・ 医師の診断書
・ 障害の状態を証明する資料(レントゲン写真、検査結果など)
・ その他、労働基準監督署が必要と認める書類
申請手続きは、これらの書類を準備し、事業所を管轄する労働基準監督署に提出することで行います。 申請から支給決定までには、一定の期間を要する場合があります。
障害年金の受給額は、以下の要素によって決まります。
・ 給付基礎日額(原則として事故発生日の直前3ヶ月間の平均賃金)
・ 障害等級
・ 算定基礎日額(ボーナスなどの特別給与を基に計算)
これらの要素を基に、障害補償年金、障害特別年金、障害特別支給金などが計算され、合計額が年間の受給額となります。
複雑な計算が必要となるため、正確な金額を知りたい場合は、労働基準監督署に相談することをおすすめします。
労災保険の障害補償年金と、国民年金または厚生年金の障害年金は、両方を受給できる場合があります。
しかし、同一の事由で両方の年金を受給する場合、併給調整が行われ、労災年金の一部が減額されることがあります。
併給調整の調整率は、以下の通りです。
・ 障害(補償)等年金と障害厚生年金および障害基礎年金の場合:0.73
・ 障害(補償)等年金と障害厚生年金の場合:0.83
・ 障害(補償)等年金と障害基礎年金の場合:0.88
併給調整によって労災年金が減額される場合でも、調整後の労災年金と障害年金の合計額が、調整前の労災年金の金額を下回ることはありません。
併給調整は、同一の事由に対して二重に補償が行われることを防ぐための措置です。
障害年金の申請によって損をすることはないので、受給資格がある場合は、忘れずに申請しましょう。
障害補償年金は、以下のようなケースに該当する場合、支給が停止されることがあります。
・ 障害の状態が改善し、障害等級に該当しなくなった場合
・ 受給者が死亡した場合
・ 受給者が禁錮以上の刑に処せられた場合
また、障害年金は、初診日が20歳未満である場合、所得が一定額を超えると支給停止となることがあります。
前年の所得が472万1000円を超えると年金の全額が支給停止となり、370万4000円を超えると2分の1の年金額が支給停止となります。
支給停止となった障害補償年金は、その理由が解消されれば、再び支給されることがあります。
例えば、障害の状態が悪化し、再び障害等級に該当するようになった場合や、所得制限により支給停止となっていた障害年金が、所得の減少によって支給要件を満たすようになった場合などです。
支給停止からの復活を希望する場合は、労働基準監督署に相談し、必要な手続きを行う必要があります。
労災事故の再発防止は、労働者自身と事業主双方にとって重要な課題です。
事業主は、安全衛生管理体制の強化や労働環境の改善など、再発防止に向けた取り組みを積極的に行う必要があります。
また、労働者に対しては、安全教育の徹底や健康管理の支援など、社会復帰に向けたサポートも重要となります。
労災保険には、社会復帰促進等事業として、様々な支援策が用意されていますので、積極的に活用しましょう。
労災による障害に対する補償として、障害補償年金は重要な役割を果たします。
受給要件や年金額の計算方法、併給調整など、複雑な制度ではありますが、理解を深めることで、適切な補償を受けることができます。
障害を負った場合は、まず労働基準監督署に相談し、必要な手続きを進めるようにしましょう。
また、再発防止と社会復帰に向けた取り組みも重要です。